店主ごあいさつ

皆さま、はじめまして。焼肉の誠道(まことみち)を極めるべく、日々精進しております廣岡誠道(ひろおか せいどう)と申します。私どものwebサイトをご訪問下さり、ありがとうございます。

さて、ここに言う「焼肉の誠道(まことみち)」とは、お客様に美味しいお肉を堪能してもらうことだけを目指す道ではありません。“食”という人間に不可欠な文化において、より美味しいものを提供しお客様に喜んで頂くことは、料理人の本質そのものであり、外してはならないことは当然ではありますが、私どもの目指す焼肉の誠道(まことみち)は、そこにとどまりません。

私の生い立ちと問題意識

私は、株式会社丸優の創業者の長男として出生し、幼少期より父親に連れていかれる牛の肥育牧場の様子を目の当りにしながら育ちました。そういった私の原体験の中で感じております牛の肥育業界と精肉業界が抱えている問題は大きく2つです。

第1に、肥育牛のアニマル・ウェルフェアの問題です。すべての牛が最終的に食肉となって出荷されるわけではなく、肥育途中で病気になって斃れる個体もいたり、病気一歩手前の個体が出荷されていくのを目にすることもありました。私が思いますに、肥育牛の健康が損なわれてしまう要因には、牛が毎日飲む水の問題とビタミンの摂取制限の問題があるのではと考えています。

まず、肥育牛が飲んでいる水に問題があるのではと考えるのは、当社で肥育している牛に与える水を、不純物を濾過した水に変えてみましたところ、肥育牛の致死率が大きく減退したからです。与える水以外は肥育条件を何ら変えていませんので、与える水の質と肥育牛の致死率との間には、相当の因果関係の存在が強く推論ができるものと考えています。

次に、ビタミンの摂取制限の問題とは、「市場が求める美味しい牛肉=サシ(脂肪分)が美しく入った牛肉」であるため、人為的にサシを多く入れるために肥育牛に与えるビタミン群を制限してしまうことを指しています。人間と同様に牛が健康に生きていくためにはビタミン群は必須ですが、美しいサシを作り出すために、意図的に与えないのですから、牛の身体への負担は相当なものがあると考えられます。こちらについては何らかの客観的なデータがあるわけではなく、常識的に考えて、ビタミンの摂取制限と肥育牛の致死率の間に因果関係の存在が強く推論されるものです。

アニマル・ウェルフェアの観点からの問題については、当社は牛が毎日飲む水の問題を解決し、肥育牛の致死率を大きく低下させることができました。そして不純物を除去した水で育てた牛を当社オリジナルブランド牛「美水牛」として生産しています(後述)。一方で、ビタミン群の制限も問題は未だ解決できておらず、これは牛肉のランク付けの評価システムという業界全体の問題と言えるものです。残念ながら、当社が単独で解決できるものではないと考えています。

第2に、肥育農家の後継者問題があります。昨今は、肥育農家の後継者問題が顕在化し、肥育農家の数が減少の一途を辿っています。昨今の国産牛肉の高騰は、肥育農家数の減少に伴って国産牛肉の供給量が減少し、需給が逼迫しているために生じているものです。肉牛の出荷価格が高騰して、さぞかし肥育農家は儲かるだろうと思われるかもしれませんが、円安の影響によって輸入飼料が高騰している中では、肥育農家の手元に残るお金は従来通り微々たるものです。一旦疫病などが蔓延すれば、事業の継続性に大きな疑義が生じる商売です。そんな大きなリスクを抱えつつ、日々牛の世話という重労働を強いる牛の肥育業界に興味を抱いてくれる若者はほとんどいません。このように、牛の肥育業界においても後継者をいかに確保するかは、喫緊の課題となっています。

三方良しの世界をつくることこそ、
誠道(まことみち)

幼少期よりこういった肥育業界、精肉業界のリアルな世界を垣間見て育った私は、吸い込まれるように父の後を追って精肉業界へと飛び込みました。その時に立てました志は、「肥育業界、精肉業界を変えるーつまり、牛も、生産者たる肥育農家も、消費者たるお客様もすべてが笑顔で暮らせる世界を新しく作ること」でした。

牛は牛肉になるまでの一生を健康で過ごすことができ、生産者たる肥育農家は、飼っている牛に対する栄養制限を、心をいためつつ行う必要がなく、牛を肥育することで対価として十分な報酬を手にすることができ、結果、後継者になりたいという若者が殺到する、そして、消費者たるお客様は、脂肪分の取りすぎによる健康被害を心配することなく、美味しい牛肉を堪能できるような、これまでにない新しい未来を作ることでした。

私はこういったビジョンを描きながら、少しずつ前進し、先にも記載しました通り、肥育牛に与える水を変えることで致死率を減少させ、神戸牛にも劣らない肉質の当社オリジナルのブランド牛(美水牛)を育て上げることに成功し、アニマル・ウェルフェアに対して一定の貢献ができたと考えております。その美水牛は、自社牧場(外部の肥育委託牧場)にて200頭弱を飼育しておりますが、まだまだ広く市場に流通させるだけの規模ではなく、私の考え方に共感頂いております一部のホテルやレストランで利用頂いている程度です。

美水牛の肉質の特徴は、脂肪の融解点が、他の神戸牛等のブランド牛に比較すると著しく低いことです(研究機関の試験結果あり)。フライパンで焼くと一目瞭然なのですが、当社オリジナルのブランド牛は脂肪分がドロッとしておらず、水のようにサラッとしております。おそらく人間の体内に入っても、融点が低いため血管内に付着することが少なく、様々な成人病を引き起こすリスクが少ないのではないかと推察しております(まだ、ここまでのエビデンスは取れておりません)。その結果、人間のウェルフェア(成人病等の予防)にも貢献できるのではないかと思料しております。

まだまだ、生産数量が僅少な美水牛については、今後は、私の考え方に共感して頂ける外部の肥育農家様を広く探索中であり、そういった外部の協力肥育農家様を巻き込みながら、「不純物を除去した水で育った健康的な牛」の供給量を増やしていきたいと考えております。「牛にも、生産者にも、消費者にも嬉しい美水牛」が広く世の中に認知され、神戸牛に変わってデファクト・スタンダードになれば、業界を支配している「牛肉のランク付けのための評価システム」自体を変えることが可能となるかもしれません。そうなれば、私たちが問題と考えている「ビタミン群の摂取制限を行って、無理にサシを入れること。」をしない世界を実現できるかもしれないのです。

そんな世界を実現する第一歩が
「沸かし屋」

今回、全く新しいコンセプトの下、再オープンさせて頂きます「沸かし屋」をご理解いただくためにも、上記に、私の原体験、私どもが考える業界の問題点、当該問題に対する我々の取り組みを、長々と記載させて頂きました。

再オープンいたします「沸かし屋」は、単なる焼肉屋ではなく、そういった業界を変えていく我々の取り組みの中の1つのピースという位置づけになります。

さて、この度オープンいたします「沸かし屋」は、従来の一般的な焼肉店とは異なる全く新しいコンセプトの焼肉店です。

肉を焼くのではなく、“沸かす”というコンセプトに挑戦するお店です。

多くの皆さんが、美味しい焼肉として想像するのは炭火焼肉ではないでしょうか。炭火焼きは、炭の温度が1,000℃に達することもあり、非常に高温の中で肉を焼くことになりますが、実はこの焼き方は肉が本来的に持つ旨味を失う原因になっています。   肉の旨味を閉じ込めている細胞膜は、急激な温度変化にさらされると破れてしまい、その中にある旨味成分を含んだ水分が漏れ出してしまいます。炭火で焼いていると、肉汁がぽたぽたと落ちるのを見たことはないでしょうか。あれこそが、肉の旨味が漏れ出している瞬間なのです。つまり、私たちが「炭火で焼くとお肉は美味しい」を感じている時でさえ、実は旨味成分は失われてしまっています。炭火焼は、そんな“もったいない焼き方”でもあるのです。(ただし、炭火焼は高温で表面をカリッと仕上げるので、香ばしい風味が残り美味しく感じます。これはこれで美味しい食べ方だと思います。)

私たちが開発した「沸かす」調理法は、この問題を解決するために生まれました。ガスの炎の上に一枚の特殊なプレートを挟み、そのプレートを介して炭火よりも低温でじっくりと肉を温めることが、「肉を沸かす」ことになります。プレートから発生する遠赤外線が、牛肉の内部へじっくりと熱を届けることで、言うなれば、中から「じっくりをふっくらへ。」火入れするのです。過度な高温に晒されないために、肉の細胞膜を壊すことなく、火を通すことができます。細胞膜が壊れないということは、肉の旨味成分をほぼ逃がさずに調理できるということです。旨味が漏れた状態の「炭火焼肉」でも美味しいと感じるお肉を、旨味をそのまま丸ごと閉じ込めて味わえるとしたら、その美味しさはまさに別次元です。

このように、新しい焼き方「沸かす」であれば、サシがたくさん入った高級肉でなくても、肉本来の旨味成分を十分に引き出すことが可能となります。つまりは、「霜降り肉でなくても、沸かせばお肉は十分美味しい。」ことが理解され、「肥育牛の身体に負担を強いるビタミンを制限する肥育方法を採用しなくても、お肉は十分に美味しい」ということに多くの人が気付くでしょう。

世の中の消費者の持つ、「美味しいお肉とは霜降り肉である。」というパーセプション(知覚)を変えることができれば、わざわざ肥育牛の栄養制限を行う必要性などなくなるわけです。ここまで来れば、肥育牛のアニマル・ウェルフェアが大きく改善されることになります。このように新店舗「沸かし屋」は、牛肉に対する世の中の消費者のパーセプション転換(=知覚転換)を実現していく第一歩となるのです。

今回の「沸かし屋」の成功は、私が描く「三方良しの世界」の実現の第一歩となります。ぜひ、皆様にご来店頂いて、「肉は沸かすとこんなに美味しい!」ことを体験して頂きたいと考えています。

「沸かし屋」の成功は、単なる焼肉屋の成功ではありません。アニマル・ウェルフェアの実現も含む「三方良しの世界」の実現のための第一歩となるのです。私どもが描くそんな世界に共感いただけるお客様と出会えますことを、心より祈念いたしております。

廣岡誠道

沸かし屋店主 
                    廣岡誠道(ひろおかせいどう)